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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)267号 判決 1999年12月16日

原告

株式会社ダンエンタープライズ

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

被告

特許庁長官 【C】

指定代理人

【D】

【E】

【F】

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  原告の求めた裁判

「特許庁が平成6年審判第11801号事件について平成11年6月25日にした審決を取り消す。」との判決。

第2  事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

原告は、平成1年7月6日、別紙に表示の構成から成る商標(本願商標)について、指定商品を第17類「被服、布製身回品、寝具類」とする商標登録出願をしたが(平成1年商標登録願第75862号)、平成6年6月17日拒絶査定があったので、平成6年7月12日審判請求をし、平成6年審判第11801号事件として審理されたが、平成11年6月25日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は平成11年7月26日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  原査定の理由

原査定は、登録異議の結果「本願登録異議の申立ての全趣旨を総合勘案するに、登録異議申立人(ザ ポロ/ローレン カンパニー(アメリカ合衆国ニューヨーク所在))がポロシャツ,トレーナーなどの衣服について使用している『Polo』の標章及び馬に乗りステッキをおどらせているポロ競技者の標章(以下『ポロプレーヤー標章』という。)の各標章は、本願商標の出願前我国の衣服等の需要者間において広く認識せられたいわゆる周知、著名な商標と認められる。しかして、本願商標は、その構成中に2騎のポロ競技者を顕著に表して成るものであって、前記ポロプレーヤー標章とは1騎と2騎の違いこそあれ、共にポロ競技者を描いて成る点において両者は相通ずるものといわなければならない。そして、本願商標は、その指定商品中に前記ポロシャツ,トレーナーなどの衣服を含むものである。そうとすると、本願商標をその指定商品中のポロシャツ,トレーナーなどの衣服について使用した場合、需要者は前記事情よりしてあたかも該商品が登録異議申立人の業務に係るもののごとく商品の出所について混同を起こすおそれが少なからずあるとみるのが相当である。よって、本願商標は商標法4条1項15号に該当する。」旨、認定判断した平成6年5月18日付け登録異議の決定に記載した理由により、本件出願を拒絶した。

(2)  原告(請求人)の審判における主張

原告は、「本願商標は、2本の小枝を左右対称に冠状に表した図形の中央部にスティックを持つ位置を異にした2騎によるポロ競技の球を取り合う様を躍動感あふれる独特の描出方法で表したものを配して成る、全体としてまとまりよく構成された不可分一体の他に類例のない特徴を有する。その構成中2騎のポロ競技者の図形と小枝の図形とを分離して観察し、両者をそれぞれ本願商標の要部のように認識しなければならない理由は見いだせない。これに対してザ・ポロ/ローレン・カンパニーの使用に係る『ポロプレーヤーの図形』は極めて独創性に富み、かつ非写実的なもので『ポロゲーム』をしている人を彷彿とさせる程度にすぎない特異性を持った『ポロプレーヤーの図形』で競技者一騎のみから成り、しかもスティックを振り上げた状態を静止的に描いたものであって、本願商標と使用商標との図形部分のみを対比しても、両者は、その外観において顕著な差異が存する。『ポロプレーヤー標章』が【G】のデザインによる被服等を取り扱う業界において著名であることを前提としても、本願商標は前述のとおり別異のものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、ザ・ポロ/ローレン・カンパニーの業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるということはできない。本願商標は商標法4条1項15号の規定に該当するものではない。」旨を主張し、証拠方法として審判甲第1号証を提出した。

(3)  審決の判断

本願商標は、別紙に表示したとおり2騎のポロ競技者の図形部分とそれを囲むようにして左右対称に描いて成る枝葉状の図形部分から成る構成のものである。

そして本願商標の前記枝葉状の図形部分は、中央の2騎のポロ競技者の図形部分を飾っている図形としてみられ、これ自体、見る者に強く印象を与えるものではないと認められる。それに対して、中央の2騎のポロ競技者の図形部分は、前記枝葉状の図形部分で飾られて、該図形部分が強調されて印象に強いものと認められる。

他方、原査定の理由に記載されている「登録異議申立人(ザ ポロ/ローレン カンパニー)がポロシャツ,トレーナーなどの衣服について使用している馬に乗りステッキをおどらせているポロ競技者の標章(ポロプレーヤー標章)」は、別紙に表示したとおりの構成のものである。

そこで、本願商標の2騎のポロ競技者の図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章の図形の構成をみるに、線で描かれたマレット、黒塗りの馬及びポロ競技者を表した図形の描写方法が類似しているものと認められる。

さらに、登録異議申立人のポロプレーヤー標章については、以下により、登録異議申立人の「ザ ポロ/ローレン カンパニー」が、商品「被服、装身具、香水、眼鏡」等に長年使用し、本願商標に係る登録出願前には、既に周知、著名な標章となっていたものと認められる。

すなわち、(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーである【G】は1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインを始め、トータルな展開を図ってきたこと、1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのを始め、数々の賞を受賞しており、1974年には映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優【H】の衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。そのころからその名前はわが国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。

また、(株)洋品界昭和55年3月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報(株)昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略'85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、わが国においては西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズ社から使用許諾を受け昭和52年から【G】のデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、昭和53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。

そして、【G】に係る紳士服、紳士用品については、(株)スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、(株)講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑'79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑('81年版」(昭和56年4月発行)、「世界の一流品大図鑑'80年版」(昭和55年6月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB 1980,12」、「世界の一流品大図鑑'81年版」(昭和56年6月発行)、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、眼鏡については、「世界の一流品大図鑑'80年版」、「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑'81年版」、「世界の一流品大図鑑'81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されている。

そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標中の2騎のポロ競技者を表して成る図形部分より、前記周知、著名になっている登録異議申立人が使用のポロプレーヤー標章を連想し、該商品が登録異議申立人又は登録異議申立人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本願商標は商標法4条1項15号に該当するとした原査定は妥当であり、取り消すことができない。

第3  原告主張の審決取消事由

審決は、「本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標中の2騎のポロ競技者を表して成る図形部分より、前記周知、著名になっている登録異議申立人が使用のポロプレーヤー標章を連想し、該商品が登録異議申立人又は登録異議申立人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。」と認定、判断したが、以下に主張するとおり誤りである。

1  審決は、「本願商標の前記枝葉状の図形部分は、中央の2騎のポロ競技者の図形部分を飾っている図形としてみられ、これ自体、見る者に強く印象を与えるものではないと認められる。それに対して、中央の2騎のポロ競技者の図形部分は、前記枝葉状の図形部分で飾られて、該図形部分が強調されて印象に強いものと認められる。」と認定したが、誤りである。

本願商標は、中央に並走する2騎のポロプレイヤーを正面から描いた図形を配し、この図形を囲むように、2本の植物の小枝葉を下端部で交差させ上端部に開口が位置するC字状に描いた図形を配した構成のものであって、両方の図形が主従軽重の差なく全体としてまとまりよく一体に表された図形商標である。

そして、2頭の馬は、それぞれの馬体を相手側に傾けてぶつかり合いながら疾走する様子に描かれており、また、左側のプレイヤーは馬上で相手と反対側に身を乗り出し、振り上げたマレット(先端がT字形になっている杖)を今正に振り降ろさんとする様子に描かれており、右側のプレイヤーも同様に馬上で相手と反対側に身を乗り出し、今正にマレットを振り降ろし終わらんとする様子に描かれているため、この2騎のポロプレイヤーの図形が、2本の植物の小枝葉を下端部で交差させ上端部に開口が位置するC字状に描いた図形の中から、今にも飛び出して来るかの如き躍動的な印象を看者に与えるものである。

これに対し、登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、1騎のポロプレイヤーを斜め前方から描いた図形商標である。そして、その馬はゆっくりと歩んでいる様子に描かれており、また、プレイヤーは馬上でマレットを構えた状態で静止している様子に描かれており、全体として威厳のあるゆったりとした静的な印象を看者に与えるものである。

このように、本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章とは、図形全体から受ける視覚的印象を全く異にするものと認められ、両者は外観において類似しないというべきである。

また、本願商標は特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないから、称呼、観念の点においても、本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章が類似するということはない。

したがって、本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、明らかに別異のものといわざるを得ない。

2  審決は、「本願商標の2騎のポロ競技者の図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章の図形の構成をみるに、線で描かれたマレット、黒塗りの馬及びポロ競技者を表した図形の描写方法が類似しているものと認められる。」と認定したが、誤りである。

ポロ競技は、1チーム4名ずつから成る2チームが馬上からマレットを使ってボールを打ち合い相手のゴールに入れることを競う単純なスポーツであり、ポロプレイヤーの特徴的なポーズも多かれ少なかれ似かよった構図のものとなってしまいがちであるが、前述のとおり、本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章とは、図形全体から受ける視覚的印象を全く異にするものと認められ、両者は外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。

3  さらに審決は、「(【G】の)デザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された『Polo』の文字と共に『by RALPH LAUREN』の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは『ポロ』の略称でも呼ばれている。」と認定したが、誤りである。

審決は、馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形が、横長四角形中に記載された「Polo」の文字及び「by RALPH LAUREN」の文字と共に用いられた場合をとらえて、前記図形部分から「ポロ」の略称が出ると認定しているが、この場合はむしろ前記「Polo」の文字部分から「ポロ」の称呼が出ているものとみるのが妥当である。

また、本願商標に係る指定商品「被服」の中には「スポーツシャツ」も含まれており、各種スポーツにおけるプレイヤーの特徴的なポーズを描いた絵柄が商標として採択され使用されることは容易に考えられるところである。したがって、馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形から直ちに「ポロ」の略称が生ずるとすれば、ポロ競技をモチーフとした図形商標は、ポロプレーヤー標章の使用者であるザ ポロ/ローレン カンパニーあるいはそれから使用許諾を受けた者以外何人も使用することができないこととなり、妥当でないことは明らかである。

4  以上のとおり、本願商標をその指定商品について使用しても、登録異議申立人のポロプレーヤー標章に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。

第4  審決取消事由に対する被告の反論

本件に関する事実は審決認定のとおりであり、これに基づいてした審決の判断に誤りはない。なお、以下のとおり補充する。

1  本願商標の構成中の枝葉状の図形部分は、中央の2騎のポロプレーヤーの図形部分を装飾し引き立てる輪郭的図形とみられ、これ自体、見る者に強く印象を与えるものではない。そのことは、前記枝葉状の図形部分が、その中に表示される主要な文字、記号、図形を飾る輪郭的な図形として、一般に多く用いられて自他商品識別力がないか又は極めて弱いものであることからもいえるものである。そうすると、本願商標は、構成中の2騎のポロプレーヤーの図形部分が自他商品識別力を有するものとして看取される強い印象を与えるものであり、そのポロプレーヤーの図形部分が注目されるものであり、常に全体をもって一体のものとして看取されるものではない。

また、登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、ポロプレーヤーが馬上からマレットを上から振り下ろさんとする様子を看取させるものであり、本願商標のポロプレーヤーの図形部分と同様に躍動的な印象を看者に与えるものであるから、本願商標中の強く印象を与えるポロプレーヤーの図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤーは、共にポロプレーヤーの躍動的な印象を看者に与える点において紛らわしいものといわざるを得ない。

2  審決が認定するとおり、【G】のデザインに係る被服や眼鏡などのファッション関連の商品について使用されるポロプレーヤー標章は、「ポロ」と称呼される「Polo」の文字と共に長年使用されていることにより、【G】に係る「Polo」の図形として、取引者、需要者間に広く認識されている。

そして、「ポロ競技」は、わが国においては、その愛好者は極めて少なく、馴染みの薄いスポーツである。

本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、線で描かれたマレット棒、黒塗りの馬及びポロプレーヤーを表した図形の描写方法が類似しているものであり、また、強く印象を与える本願商標中のポロプレーヤーの図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、共にポロプレーヤーの躍動的な印象を看者に与える点において紛らわしいものであり、さらに、登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、被服や眼鏡などのファッション関連の商品においては、【G】のデザインに係る被服等について使用される標章を総称するものとして、取引者、需要者間に広く認識されて強い自他商品の識別力、顧客吸引力を有しているものであること、及び、わが国において、「Polo」を始め、「by RALPH LAUREN」及び登録異議申立人のポロプレーヤー標章などの各商標を真似た偽物を、「【G】のデザインに係る商品」などと触れ込んで販売している事実があることなどを併せ考えると、被服や眼鏡などのファッション関連の商品に馬に乗ったポロプレーヤーの図形商標を使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、スポーツ競技の図形を表したと理解するというより、【G】のデザインに係る商品であると認識するというべきである。

3  審決は、本願商標について商標法4条1項15号を適用したものであって、同号は、商標が非類似であっても、登録異議申立人のポロプレーヤー標章が周知、著名であるときなどにおいて、出所の混同のおそれがあれば適用される。

第5  当裁判所の判断

1  本願商標が、別紙に表示したとおり2騎のポロ競技者の図形部分とそれを囲むようにして左右対称に描いて成る枝葉状の図形部分から成る構成のものであり、登録異議申立人のザ ポロ/ローレン カンパニー(アメリカ合衆国ニューヨーク所在)がポロシャツ,トレーナーなどの衣服について使用している標章(馬に乗りステッキ(マレット)をおどらせているポロ競技者の標章。ポロプレーヤー標章)が、別紙に表示したとおりの構成のものであることは、審決認定のとおりと認められる。

そして、登録異議申立人のポロプレーヤー標章については、ザ ポロ/ローレン カンパニーが、審決認定の以下の事実関係の下で、被服、装身具、香水、眼鏡等の商品に長年使用し、本願商標に係る登録出願前、既に周知、著名な標章となっていたものであることは、原告も争わず、乙第1ないし第16号証及び弁論の全趣旨によっても認められるところである。

(1)  アメリカ合衆国在住のデザイナーである【G】は1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインを始め、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのを始め、数々の賞を受賞しており、1974年には映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優【H】の衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立し、そのころからその名前はわが国服飾業界においても知られるようになったこと。

(2)  わが国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズ社から使用許諾を受け、昭和52年から【G】のデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、昭和53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したこと。

(3)  【G】に係る紳士服、紳士用品については、(株)スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、(株)講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、(株)講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑'79年版」、(株)チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑'81年版」(昭和56年4月発行)、「世界の一流品大図鑑'80年版」(昭和55年6月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB 1980,12」、「世界の一流品大図鑑'81年版」(昭和56年6月発行)、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典'84ザ・ブランド」、(株)講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、眼鏡については、「世界の一流品大図鑑'80年版」、「ファッション・ブランド年鑑'80年版」、「男の一流品大図鑑'81年版」、「世界の一流品大図鑑'81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていること。

2  そこで、以下に原告主張の審決取消事由について検討する。

(1)  まず、本願商標のポロ競技者の図形部分と枝葉状の図形部分との間に主従軽重の差がないとは認められず、「本願商標の前記枝葉状の図形部分は、中央の2騎のポロ競技者の図形部分を飾っている図形としてみられ、これ自体、見る者に強く印象を与えるものではないと認められる。それに対して、中央の2騎のポロ競技者の図形部分は、前記枝葉状の図形部分で飾られて、該図形部分が強調されて印象に強いものと認められる。」との審決の認定部分に、原告主張の誤りがあるということはできない。

(2)  次に、「本願商標の2騎のポロ競技者の図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章の図形の構成をみるに、線で描かれたマレット、黒塗りの馬及びポロ競技者を表した図形の描写方法が類似しているものと認められる。」とした審決の認定部分についてみるに、確かに、原告主張のように、本願商標が、中央に並走する2騎のポロ競技者を正面から描いた図形を配しているのに対し、登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、1騎のポロ競技者を斜め前方から描いた図形商標であるという点で差異がある。

しかしながら、本願商標のポロ競技者の図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章とは、ポロ競技者が馬上からマレットを上から振り下ろさんとする様子を看取させ、躍動的な印象を与えるものとして顕著な類似性があるものと認められるし、甲第2号証の1ないし31によれば、アメリカ合衆国で発行された雑誌「Polo」に、ポロ競技者の構図の写真、図柄が多数掲載されているが、そこには馬上からマレットを上から振り下ろさんとするポロ競技者が1人又は2人の写真、図柄が多く、マレットと馬と共に躍動的な構図である点でほとんど共通する印象を与えるものであることが認められる。

そして、乙第32ないし第35号証によれば、一般通常の日本人が購読するものと認められる「スポーツ用語」((株)教育社、1992年11月25日発行)、同じく「ニュースポーツ百科」((株)大修館書店、1995年9月20日発行)及び高等学校などの教材に使用されるものと認められる「NEW COLOR SPORTS 1995」(一橋出版(株)、1995年発行)に「ポロ競技」についての掲載はなく、また、1998年1月17日付け読売新聞(東京版夕刊6頁)の、「ポロ」と鉤括弧を付してポロ競技のことを記載し、国内初の競技場が、福岡県<以下略>に建設されることになったことを報道する記事において、ポロ競技は「日本では競技人口約30人の超マイナースポーツ。」なる記載のあることが認められる。

これらの事実によれば、「ポロ競技」は、わが国においては、その愛好者は極めて少ないものと認められるのであり、「ポロ」については、競技の名称自体は別としても、その態様、方法はわが国において馴染みの薄いスポーツであると認められる。甲第3号証によれば、「ENCYCLOPEDIA NIPPONICA 2001」(小学館、1990年7月1日発行)に「ポロ」についての解説記載があることが認められるが、同書は事項を網羅して編集した一般的な百科事典であり、この記載をもってしても上記認定を左右するものではない。

前述のように、登録異議申立人のポロプレーヤー標章は、登録異議申立人であるザ ポロ/ローレン カンパニーが被服、装身具、香水、眼鏡等の商品に長年使用し、本願商標に係る登録出願前には既に周知、著名な標章となっていたことを、以上認定の事実に合わせ考えれば、本願商標と登録異議申立人のポロプレーヤー標章との間の前記差異点は微差にすぎないものと認められるのであり、この差異点のあることをもって、「本願商標の2騎のポロ競技者の図形部分と登録異議申立人のポロプレーヤー標章の図形の構成をみるに、線で描かれたマレット、黒塗りの馬及びポロ競技者を表した図形の描写方法が類似しているものと認められる。」とした審決の認定を誤りと認めることはできない。

(3)  乙第1ないし第10号証によれば、審決が認定したように、「(【G】の)デザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された『Polo』の文字と共に『by RALPH LAUREN』の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは『ポロ』の略称でも呼ばれている。」と事実を認めることができ、そこに原告主張のような認定の誤りはない。

(4)  原告の主張は、要するに、本願商標は、登録異議申立人のポロプレーヤー標章と外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、明らかに異なるものであるから、商品の出所の混同を生じさせるおそれがある商標とはいえないというものである。

しかしながら、本願商標は、その指定商品として「被服」、「布製身回品」を含んでいるところ、既に被服、装身具、眼鏡等の商品につき長年使用され、周知、著名となっている登録異議申立人のポロプレーヤー標章と、使用に係る商品において共通又は近似しているのみならず、前記(1)ないし(3)の説示から明らかなとおり、本願商標に接する被服等の取引者、需要者に対し、登録異議申立人のポロプレーヤー標章と相紛らわしい印象を与えるものとなっており、登録異議申立人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれのある商標であるといわざるを得ない。

(5)  以上のとおり、審決には原告主張の誤りがあるとは認められず、「本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標中の2騎のポロ競技者を表して成る図形部分より、前記周知、著名になっている登録異議申立人が使用のポロプレーヤー標章を連想し、該商品が登録異議申立人又は登録異議申立人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所の混同を生ずるおそれがある」とした審決の判断に、誤りは認められない。

第6  結論

以上のとおりであり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、原告の請求は棄却されるべきである。

(平成11年11月9日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

<省略>

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